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寒夜の明け方









初冬の朝…外は未だ幾分薄暗い。

「ううっさぶういっ」

寝相の悪さのせいで布団からはみ出していた背中が冷え切っている。

その寒さでいつもより早く目を覚ましたマヤは、ぽすぽすと隣の布団に手をやった。

手探りで真澄を探しだして寄り添い、ぬくぬくと温まろうと思っていたのだが…



あれ。いないみたい…

どこいったのかな…トイレかな…

ちょっと待ってようか…

そう思いつつも、眠気がまた襲ってきていつのまにか寝てしまっていた。

再び目が覚めたのは、ベッドの中に戻ってきた真澄の手がマヤをふんわりと抱き寄せたから。

「…ん、どこいってたの?真澄さんいなくて寒かった…」

「俺は湯たんぽがわりか…寒ければエアコンをつければいいだろう」

そう言いながらエアコンのスイッチを入れる真澄に、マヤは甘えた声を出す。

「エアコンじゃ駄目なんだもんー」

真澄に擦り寄ってマヤはうっとりと目を閉じた。

んー……暖かい…幸せー…

温かさで夢見心地になりながら、幸福を噛み締める。

うとうとし始めたところで、目覚まし時計のアラームが鳴り出した。

「むぅー…」

「鳴ってるぞ、起きないのか?」

「も、もうすこしー」

「しょうがないヤツだな…」

真澄がアラームを止めるためにベッドから起き上がると、布団にトンネル状の空間ができる。

肌が張るような冷気に震え上がって、マヤは布団の中で身を縮めた。

「寒ぅいー」

カメの様に布団を背にしょったまま体を丸くするマヤ。真澄はそんな彼女を抱きしめてやりながら笑う。

「そろそろ起きないと遅刻するぞ」「ん…」

「俺は先に起きるぞ」「駄目ですよぅ…もうちょっと付き合って下さい」

「君に付き合ってたらキリがないからな。ぎりぎりの時間になっても起きて来なかったら朝倉が来るぞ」

「へ?何で?」「うっかり君と寝過ごしてしまわないために頼んでおいた」

「あは、昨日みたいに二度寝しちゃったら困るものねっ」「笑い事じゃない。この俺が遅刻するなんて前代未聞だ」

昨日のどたばたした朝を思い出して「ごめん」と謝りつつも、マヤは真澄の胸元で憩うことをやめられない。

こうしてお互いの温かさを感じられる冬の寒さが、大好き…



コンコン、と部屋の戸がノックされた。

「真澄様、お時間ですぞ」

「そら、最終アラームが鳴ったぞ、部屋も暖まったからもう起きれるだろ」



エアコンからふきだす温風なんて、味気なくて嫌いだ。

もう少しこのままでいたかったけど…朝倉さんが来たなら仕方ない、起きようかな。

「真澄さんと一日中こうしていたかったなあ」

「そうだな…しかし往生際悪いな、君も」

蓑虫のように包っていた布団を勢いよく剥がれて、マヤはへへっと舌を出しながら起き上がった。

「おはよう、マヤ」

「おはよ!真澄さん!」

朝寝坊の誘惑に打ち勝ったご褒美に、どちらからともなくキスを交わす。

今日もまた二人の新しい一日が始まる。











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