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「真澄様、どうかなさいまして?」
呆けた上司につっこみをいれるのは、これで何度目だろう。
「あ、ああ…」と返事が帰ってはきても、すぐにまた、阿呆面に戻ってしまう…
「ますーみーさーま」
「ん?」
「いい加減になさいまし!!」
水城に一喝されて、やっと凝り固まっていた真澄の思考がほんの少し動き出す。
……紫織の提案はそれだけ衝撃的だった。
それを耳にした直後から、今の今まで、時が止まっていたくらいには。
驚きだった。彼女が、あんな事を言うなどとは思いもしなかった。
一体、何が彼女をあそこまで変えたのだろう…
いや…とりあえず、今は…やるべきことに気をむけなくては…
「すまない…水城くん、今日の会議の予定は」
「…先程二度も申し上げましたが?もう一度、お伝えいたしますか?」
「……ああ」
伝えたところで、また聞き流されるのは目に見えていた。
心ここにあらずといった上司に、水城は厳しい目を向ける。
「真澄様…北島マヤの失踪について、何かご存知なのではなくて?」
「なんっ…知るはずも無かろう!?君は、なぜ俺が知っていると思う…っあっつっ」
動転のあまり、コーヒーカップをがっとつかみ、水のように飲もうとして熱さに首をすくめる。
放り出されたカップは床を転がり、琥珀の液体を床にばら撒いた。
予測以上に過剰な反応をする上司に、水城は溜息をつく。
「一目瞭然です…いえ、私は…存じ上げておりますわ。真澄様が、マヤさんを無下に拒んだ事。彼女、ひどく思いつめた様子だった…」
「なぜそんなことを…?……つまり、君は俺が彼女を追い詰めたと言いたいわけか?」
「そんなことは申し上げておりません…それよりも、彼女の行方を、知りたいとは思わないのですか?」
「そんな必要はない。俺には関係のないことだ」
「っ!見損ないましたわ!あの子が少女の頃から、あなたは目をかけてきたではないですか、あの子の気持ちを受け取らずにいざとなったら放り出すなんて…あんまりではないですの?」
「馬鹿馬鹿しい。だいたい、なぜ、君がそんなことを…」
「探して下さいませ、あの子を」
「だからその必要はないと言っている!」
「真澄様!」
「あーうるさいな君は!彼女は!柳禅財閥跡取りの家にいるんだ!ほうっておけばいい!」
「んまっ!なんですって!そんな他人事みたいな顔をなさっているくせにもうしっかり現在位置を把握されているなんて…」
水城は、はっと、息をのむ。
「もしかして…あの鷹宮をめぐった一連はすべて…柳禅のさしがねなのですか?」
「ああ、おそらくそうだろうな」
「真澄様…これほど危機的な状況はいままでにないのでは…きっと柳禅は新手を打ってきます。もしかすると…被害は鷹宮だけでなく我が社にも及ぶかも…」
水城は深刻な顔で真澄を見るや、眉間にシワを寄せた。
なんてことなの!!まぁた、聞いてない…!!
「真ー澄ー様ー!!呆けてる場合ではありませんわよ?!しっかりなさってくださいませ!」
大声をあげる水城に目を向けず、真澄はため息をつく。
「聞いているさ。ああ、分かったよ…仕方が無いな。水城君、スケジュールの調整をしてもらえるか?」
引き出しから取り出し、ぴんと弾いて寄こした封書を開いて、水城はひどく驚いた。
「?!」
これは…!?まさか…!
今まさに、話題にのぼっていた人物からの、『招待状』だった。
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